公的移動支援の限界

公的移動支援を国や自治体等が整備しており、多くの方々が恩恵を受けています。また、民間の公共交通機関もユニバーサルデザイン化を進めています。しかし、公的移動支援には限界があります。

障害者等の移動支援の限界

令和元年に重度障害を持つ参議院議員の通勤は公的移動支援対象外であることが社会的に注目されました。「障害者等の移動支援について(厚生労働省資料、平成27年7月14日)」のP.3にある通り、個別給付の移動目的において、” 通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出は除く”となっています。

介護保険の移動支援の限界

要介護(要支援)の認定者数は、平成29年4月現在633万人で、訪問介護の移動支援が使えますが、下記の限界があります。

1.外出介助として不適切な例

日用品以外の買い物・外食・通勤・趣味・冠婚葬祭・地域行事への参加

2.通院介助として不適切な例

居宅を含まない目的地間の外出介助は介護保険の対象外。例えば、自宅近くの駅で待ち合わせて病院まで行くのは対象外

3.病院内の介助

院内介助は医療保険で提供されるサービスであるため、病院スタッフが対応するのが基本

4.受診中の待ち時間

院内での待ち時間や診療室内等での介助等は、サービス提供時間に含まれない

5.入退院

入退院時の付き添いは、家族などの対応範囲となるため、原則、訪問介護の対象外

6.家族の同乗

介助が必要なサービスという位置づけのため、家族は、原則、同乗できない

その他の移動支援の限界

1.タクシー

通院では病院玄関で降り、歩行介助や院内でのトイレ介助等は不可

2.自費の訪問介護や訪問看護

1時間4千円から1万円で、経済的に負担が大きいという声がある

3.ボランティア

事故の損害賠償リスクが大きい

4.家族

遠方に住んでいることや仕事で休めないことがある

上記のような背景があり、タクシー等も運航していない地域では、高齢ドライバーは自ら運転をすることがあります。75歳以上の運転免許保有者は2008年の304万人が2018年に564万人となりました。一方で、高齢者による運転ミスによる重大事故が相次いでおり、ニュースをきっかけに運転免許証を自主返納する人は増え、2018年の返納者数は42万1000人と10年前の約8倍になりました。

公的移動支援を受けられず、自由に移動することができない人たちのために、ドコケアに限らず、新たなモビリティが求められています。